尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)
労働衛生一般・原理・過去23回中10回、関連する論点が出題
原理
体内に入った物質は、代謝・排泄で減っていく。代謝物の尿中濃度は、ばく露の間は上がり、終了後は低下するので、採尿の時期は、物質の生物学的半減期に合わせる(有機溶剤は作業の終了時)。
この原理で解ける論点は4個あります。丸暗記ではなく、理屈から答えを導けるようにしておくと、初見の選択肢にも対応できます。
この原理で解ける問題(2問)
令和7年度 第1回(2025年8月実施)
労働衛生一般
得点必須A原理で解く
化学物質の吸収、代謝、蓄積等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- (1)有害物質の経皮吸収には、皮膚の表皮を透過して真皮の毛細血管に至る経路と、毛孔や汗孔から侵入する経路があるが、水溶性物質は、主に毛孔や汗孔から体内に侵入する。
- (2)体内に取り込まれた有機溶剤の代謝に要する時間は長く、有機溶剤にばく露しても尿中の代謝物はすぐには増加しないため、採尿は、有機溶剤業務終了後、24時間以上経過してから行うようにする。
- (3)トルエンが代謝されると、馬尿酸として尿中に排泄されるが、清涼飲料水やマーガリンなどに食品添加物として含まれている安息香酸を摂取すると、同様に馬尿酸として尿中に排泄されるため、トルエンのばく露評価に当たっては注意を要する。
- (4)ナフタレンは、体内で代謝されて、1-ナフトール又は2-ナフトールとして尿中に排泄される。
- (5)鉛の生物学的モニタリングの指標として、尿中の δ-アミノレブリン酸がある。
正答 (2)
多くの有機溶剤は、体内で比較的速く代謝されて尿中に出てきます。そのため、有機溶剤等健康診断の尿の採取は、作業が続いた週の後半の、その日の作業終了時(終業時)に行うのが基本です。業務終了から24時間以上たってから採尿するとする選択肢2は誤りです。
時間がたつと代謝物は尿中から減ってしまい、実際のばく露を正しく反映できなくなります。採尿のタイミングは、ばく露をとらえるための大切な条件です。
この問題は、試験本番では得点しなければならない問題です(学習の優先度:高)。
理由:初見の選択肢ですが、原理「尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)」(過去23回中10回出題)を理解していれば、解けます。
原理から解く:尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)(過去23回中10回出題)
この区分は、過去の全回の出題にもとづく目安です。
出題頻度
この科目の過去23回のうち、同じ内容が出題された回数です(同じ回に重複しても1回と数えます。頻度は、問われている論点(同じ事実のまとまり)の出題回数です)。
- (1)正しい記述頻出のおとり:全23回中1回出題(出題確率4%)論点「有害物質の経皮吸収には、皮膚の表皮を透過して真皮の毛細血管に至る経路と、毛孔や汗孔から侵入する経路があるが、水溶性物質は、主に毛孔や汗孔から体内に侵入する」原理「脂溶性の物質は皮膚からも吸収される」:全23回中10回出題
- (2)誤った記述正答(原理から解ける):全23回中1回出題(出題確率4%)論点「体内に取り込まれた有機溶剤の代謝に要する時間は長く、有機溶剤にばく露しても尿中の代謝物はすぐには増加しないため、採尿は、有機溶剤業務終了後、24時間以上経過してから行うようにする(誤りの記述)」原理「尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)」:全23回中10回出題
- (3)正しい記述初見:全23回中1回出題(出題確率4%)論点「トルエンが代謝されると、馬尿酸として尿中に排泄されるが、清涼飲料水やマーガリンなどに食品添加物として含まれている安息香酸を摂取すると、同様に馬尿酸として尿中に排泄されるため…」
- (4)正しい記述初見:全23回中1回出題(出題確率4%)論点「ナフタレンは、体内で代謝されて、1-ナフトール又は2-ナフトールとして尿中に排泄される」
- (5)正しい記述頻出のおとり:全23回中6回出題(出題確率26%)/同じ記述の出題:3回論点「鉛の生物学的モニタリングの指標として血中の鉛濃度がある。」
出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会 公表試験問題(令和7年度 第1回・2025年8月実施)
令和2年度 第1回(2020年8月実施)
労働衛生一般
得点必須A原理で解く
化学物質の吸収、代謝、蓄積等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- (1)体内に取り込まれた鉛の生物学的半減期は数時間と短いので、鉛健康診断における採尿及び採血の時期は、正確にチェックする必要がある。
- (2)テトラクロロエチレンの生物学的モニタリングの指標として尿中の総三塩化物の濃度がある。
- (3)N,N-ジメチルホルムアミドの生物学的モニタリングの指標として尿中の N-メチルホルムアミドの濃度がある。
- (4)トルエンの生物学的モニタリングの指標である尿中馬尿酸の濃度は、飲食物中の安息香酸の量が増加すると高くなることがある。
- (5)キシレンは、代謝されて、尿中にメチル馬尿酸として排泄される。
正答 (1)
体内に取り込まれた鉛は、血液中で約1か月、骨では年単位と、生物学的半減期は長い物質です。「数時間と短い」とする選択肢1は誤りです。
採尿の時刻を正確にチェックする必要があるのは、生物学的半減期が短い有機溶剤の方です。鉛は体にたまりやすいので、採尿・採血の時期にはそれほど厳しい制約がありません。
この問題は、試験本番では得点しなければならない問題です(学習の優先度:高)。
理由:下記の通り、原理「尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)」(過去23回中10回出題)を理解していれば、論点そのものを暗記していなくても、解けるからです。
原理から解く:尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)(過去23回中10回出題)
この区分は、過去の全回の出題にもとづく目安です。
出題頻度
この科目の過去23回のうち、同じ内容が出題された回数です(同じ回に重複しても1回と数えます。頻度は、問われている論点(同じ事実のまとまり)の出題回数です)。
- (1)誤った記述正答(原理から解ける):全23回中4回出題(出題確率17%)/同じ記述の出題:1回論点「体内に取り込まれた有機溶剤の生物学的半減期は比較的短いので、有機溶剤等健康診断における尿中代謝物の検査のための採尿時刻は、正確にチェックする必要がある」原理「尿中代謝物は、ばく露の終了時に最も高い(生物学的半減期)」:全23回中10回出題
- (2)正しい記述:全23回中4回出題(出題確率17%)/同じ記述の出題:2回論点「テトラクロロエチレンの生物学的モニタリングの指標として尿中の総三塩化物の濃度がある」
- (3)正しい記述:全23回中3回出題(出題確率13%)論点「N,N-ジメチルホルムアミドの生物学的モニタリングの指標として尿中の N-メチルホルムアミドの濃度がある」
- (4)正しい記述:全23回中4回出題(出題確率17%)/同じ記述の出題:1回論点「トルエンの生物学的モニタリングの指標である尿中馬尿酸の濃度は、飲食物中の安息香酸の量が増加すると高くなることがある」
- (5)正しい記述頻出のおとり:全23回中8回出題(出題確率35%)/同じ記述の出題:4回論点「キシレンは、代謝され、尿中にメチル馬尿酸として排泄される。」
指標は血中鉛と尿中δ-アミノレブリン酸(赤血球中ではない)。鉛は主に骨に蓄積し、生物学的半減期は長い。
出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会 公表試験問題(令和2年度 第1回・2020年8月実施)