作業環境測定士試験 過去問解説

0-4 溶液の濃度

この章のゴールと導入クイズ

この章を読み終えると、分析に関する概論の溶液の計算(問5・問6、毎回1〜2問)と、捕集した量からの気中濃度の計算(問2)が解けるようになります。13回で延べ16問に直結します。

Q1 砂糖10gを水90gに溶かして砂糖水を作りました。この砂糖水の濃度は何%でしょう。

  1. 約11%(10÷90)
  2. 10%(10÷100)
  3. 9%

Q2 塩水100mLに水を足して、200mLに薄めました。溶けている塩の量はどうなったでしょう。

  1. 半分になった
  2. 変わらない
  3. 2倍になった

(答え Q1:2 Q2:2)

1 濃度の3つの表し方

言葉の確認 溶けている物質を溶質、溶かしている液体を溶媒、溶質と溶媒を合わせた全体を溶液と呼びます。砂糖水なら、砂糖が溶質、水が溶媒、砂糖水が溶液です。

濃度は「全体の中にどれだけ入っているか」です。試験では、次の3つの表し方を使います。

表し方 言葉の式 単位 よく出る場面
質量パーセント濃度 溶質の質量÷溶液の質量×100 % 市販の試薬(濃塩酸など)
モル濃度 溶質の物質量÷溶液の体積 mol/L 分析で使う溶液
気中濃度 物質の質量÷空気の体積 mg/m³ 作業環境の測定結果

どれも、割る相手は「溶液(全体)」です。導入クイズQ1は、溶液が砂糖10g+水90g=100gなので、10÷100×100=10%になります。水90gで割る誤りに注意してください。

2 質量%とモル濃度の換算:溶液1Lで考える

例 市販の濃塩酸は、質量パーセント濃度が約36.5%、密度が約1.20g/cm³です。これを溶液1Lで考えます。

  1. 溶液1L(1000cm³)の質量:1000×1.20=1200g
  2. そのうち塩化水素の質量:1200×0.365=438g
  3. 塩化水素(HCl、分子量36.5)の物質量:438÷36.5=12.0mol

溶液1Lに12.0molなので、モル濃度は12.0mol/Lです。分析で「濃塩酸(12mol/L)」と書かれるのはこのためです。

型カード0-4-A 質量%⇔モル濃度

  • 言葉の式:溶液1Lの質量=1000×密度。その中の溶質の質量=溶液の質量×質量%。溶質のmol=溶質の質量÷モル質量
  • 手順:①溶液を1Lと決める ②密度を掛けて溶液の質量を出す ③質量%を掛けて溶質の質量を出す ④モル質量で割る(逆向きの換算は、④→①の順にたどる)
  • 注意:密度のg/cm³はg/mLと同じ(1cm³=1mL、0-1)
  • 逆向きの例:1.0mol/Lの硫酸(H₂SO₄、分子量98、密度1.06g/cm³)は、溶液1L=1060gの中に硫酸98gなので、98÷1060×100≒9.2%

3 希釈:薄めても溶質の量は変わらない

例 12mol/Lの濃塩酸10mLを、水で200mLに薄めます。濃塩酸10mLの中の塩化水素は12×0.010=0.12molです。水を足しても、この0.12molは増えも減りもしません。それが200mL(0.200L)に広がるので、薄めた後の濃度は0.12÷0.200=0.60mol/Lです。

導入クイズQ2の答えも同じ理由です。水を足すと液の量は増えますが、溶けている塩の量は変わらず、濃度だけが下がります。

型カード0-4-B 希釈

  • 言葉の式:薄める前の溶質の量=薄めた後の溶質の量
  • モル濃度の場合:濃度×体積(L)がmolなので、薄める前の濃度×体積=薄めた後の濃度×体積
  • 質量%の場合:①薄める前の溶液の質量(体積×密度)に質量%を掛けて溶質の質量を出す ②足した水の質量を溶液の質量に加える ③溶質の質量÷新しい溶液の質量×100
  • 例(質量%):質量パーセント濃度30.0%の過酸化水素水(密度1.10g/cm³)100mLに、精製水(密度1.00g/cm³)200mLを加えた。①溶液110g、過酸化水素33.0g ②110+200=310g ③33.0÷310×100≒10.6%

落とし穴 質量%の希釈では、体積を足してはいけません。液体は混ぜると体積が単純な足し算にならないことがあり、試験の質量%も質量で決められているからです。体積は必ず密度で質量に直してから足します。

4 溶媒抽出:濃度×体積で分け合う

言葉の確認 水とヘキサン(油の仲間の溶媒)は混ざらず、上下2つの層に分かれます。そこに物質を入れて振り混ぜると、物質は両方の層に溶け分かれます。この性質を使って、水に溶けている物質をヘキサンの側に移し取る操作を溶媒抽出といいます。分析では、少ない量のヘキサンに移して濃くしてから測るために使います。

分配係数とは 振り混ぜて落ち着いたとき、ヘキサン層の濃度が水層の濃度の何倍になっているかを表す数です。分配係数が40なら、ヘキサン層の濃度は水層の40倍です。試験では、分配係数の式が問題文に示されます。

例 物質Aを60mg含む水溶液100mLに、ヘキサン10mLを加えて振り混ぜました。分配係数は40です。

  1. 各層にある量は「濃度×体積」に比例する。ヘキサン層は40×10=400、水層は1×100=100
  2. ヘキサン層に移る割合は、400÷(400+100)=0.8
  3. ヘキサン層には60×0.8=48mg、水層には12mgが残る

ヘキサンの方が体積は10分の1でも、濃度が40倍なので、全体の8割がヘキサンに移ります。

型カード0-4-C 溶媒抽出

  • 言葉の式:ヘキサンに移る割合=(分配係数×ヘキサンの体積)÷(分配係数×ヘキサンの体積+水の体積)
  • 手順:①分配係数×ヘキサンの体積を出す ②水の体積を足して分母にする ③割合を全体の量に掛ける
  • 注意:問題が「ヘキサンに移った量」と「水に残った量」のどちらを聞いているかを確かめる

5 捕集した量から気中濃度を出す

例 流量0.20L/分で60分間、作業場の空気を捕集管に通し、物質を36µg捕集しました。通した空気は0.20×60=12Lなので、気中濃度は36÷12=3.0µg/Lです。0-1で見たとおり1µg/L=1mg/m³なので、3.0mg/m³です。

型カード0-4-D 捕集量からの気中濃度

  • 言葉の式:気中濃度=捕集した量÷通した空気の体積(流量×時間)
  • 手順:①通した空気の体積を出す ②捕集量を割る ③µg/Lならそのままmg/m³に読み替える
  • 注意:脱着率(捕集管から取り出せた割合)などの条件が問題文にあれば、その割合で割り戻す

ここだけは覚える

  1. 濃度は「溶液(全体)」で割る:質量%とモル濃度の換算は、溶液1Lに決めて「×密度→×質量%→÷モル質量」。
  2. 薄めても溶質の量は変わらない:モル濃度は濃度×体積が一定。質量%は密度で質量に直してから足す。
  3. 抽出は濃度×体積で分け合う:ヘキサンに移る割合=K×V有機÷(K×V有機+V水)。

練習問題

原子量はH=1、O=16、Na=23、S=32とします。

  1. 食塩5.0gを水45gに溶かしました。質量パーセント濃度は何%ですか。
  2. 水酸化ナトリウム(NaOH)4.0gを水に溶かして500mLにしました。モル濃度は何mol/Lですか。
  3. 質量パーセント濃度98%、密度1.84g/cm³の濃硫酸(H₂SO₄)のモル濃度は約何mol/Lですか。
  4. 2.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液25mLを、水で500mLに薄めました。モル濃度は何mol/Lですか。
  5. 質量パーセント濃度20%の溶液100gに、水100gを加えました。何%になりますか。
  6. 物質Bを30mg含む水溶液200mLに、ヘキサン20mLを加えて振り混ぜました。分配係数が30のとき、ヘキサンに移ったBは何mgですか。
  7. 流量0.50L/分で120分間空気を通し、物質を0.30mg捕集しました。気中濃度は何mg/m³ですか。

解答

No. 答え ポイント(型カード)
1 10% 溶液は5.0+45=50g。5.0÷50×100
2 0.20mol/L 4.0÷40=0.10mol、÷0.500L
3 約18.4mol/L 1840g×0.98=1803g、÷98(0-4-A)。市販の濃硫酸が約18mol/Lとされるのはこのため
4 0.10mol/L 2.0×0.025=0.050mol、÷0.500L(0-4-B)
5 10% 溶質20gのまま、溶液が200gになる(0-4-B)
6 22.5mg 30×20=600、600÷(600+200)=0.75、30×0.75(0-4-C)
7 5.0mg/m³ 0.50×120=60L=0.060m³。0.30÷0.060(0-4-D)

この章で解けるようになった過去問

科目・席 罠の型 出題(13回中) 使う型カード
分析問5・問6 溶媒抽出と分配係数 6回 0-4-C
分析問5・問6 質量パーセント濃度とモル濃度の換算 5回 0-4-A
分析問5・問6 質量パーセント濃度の溶液の希釈 3回 0-4-B
分析問2 捕集量と通気量からの気中濃度 2回 0-4-D

「強酸の希釈とpH」(5回)は、希釈の考え方を使いますが、pHの計算に対数が要るので0-6で扱います。