0-3 気体
この章のゴールと導入クイズ
この章を読み終えると、デザイン・サンプリングの問1(ppmとmg/m³の換算)と、分析に関する概論の気体・標準ガスの問題(問3・問4・問7・問8)が解けるようになります。13回で延べ23問に直結し、第0部で最も得点に結びつきやすい章です。
Q1 同じ大きさのゴム風船を2つ用意し、同じ温度・同じ圧力で、片方には水素、もう片方には二酸化炭素を詰めました。風船の中の分子の数は、どうなっているでしょう。
- 軽い水素の方が多い
- 重い二酸化炭素の方が多い
- どちらも同じ
Q2 作業場の空気中のトルエンの濃度が「1ppm」でした。これはどういう意味でしょう。
- 空気1m³の中に、トルエンの蒸気が1mL混じっている
- 空気1m³の中に、トルエンが1mg混じっている
- 空気1Lの中に、トルエンの蒸気が1mL混じっている
(答え Q1:3 Q2:1)
1 気体は種類によらず、1molが同じ大きさの箱に入る
水素の分子は二酸化炭素の分子よりずっと軽く小さいのに、同じ温度・同じ圧力なら、1molはどちらも同じ体積を占めます。25℃・1気圧では24.45L、0℃・1気圧では22.4Lです。24.45Lは、1辺約29cmの立方体の箱1つ分の大きさです。
なぜ種類によらないのか 気体の分子は、分子そのものの大きさに比べて、分子どうしの間がとても広く離れています。気体の体積のほとんどはこのすき間で、分子そのものの大きさはほとんど効きません。そのため、体積を決めるのは分子の種類ではなく数になります。導入クイズQ1の答えが「同じ」なのはこのためです。
なぜ温度で値が違うのか 気体は温められると膨らむので、0℃の22.4Lより25℃の24.45Lの方が大きくなります。作業環境測定では、25℃・1気圧の24.45Lを使います。
2 ppmは体積の百万分率
ppmとは 全体を100万としたときの割合です。「%」が全体を100としたときの割合であるのと同じ考え方で、1%=10,000ppmです。
気体のppmは体積の割合で表します。1m³は1,000,000mL(0-1)なので、空気1m³の中にある物質の蒸気が1mL混じっていれば1ppmです。導入クイズQ2の答えはこのためです。
本文1で見たとおり、気体の体積は分子の数で決まります。したがって、体積の割合であるppmは、分子の数の割合でもあります。1ppmは「空気の分子100万個のうち、その物質の分子が1個」と言い換えられます。
3 ppm⇔mg/m³の換算:3ステップで「体積→mol→質量」
管理濃度は物質によってppmで決められたり、mg/m³で決められたりします。そのため、両者の換算はデザイン・サンプリングの問1でほぼ毎回問われます。
例 トルエン(C₇H₈、分子量92)が20ppmのとき、何mg/m³かを考えます。
- 20ppmは、空気1m³の中にトルエンの蒸気が20mLあるということ(本文2)
- 蒸気20mLは何molか。25℃では1molが24.45L、つまり1mmol(1000分の1mol)が24.45mLなので、20÷24.45=0.818mmol
- 0.818mmolは何mgか。分子量92なので1mmolは92mg、0.818×92=75.3mg
空気1m³の中に75.3mgなので、75.3mg/m³です。
型カード0-3-A ppm⇔mg/m³(25℃・1気圧)
- 言葉の式:mg/m³=ppm×分子量÷24.45、ppm=mg/m³×24.45÷分子量
- 手順:①分子量を出す(0-2-A)②どちら向きの換算かを確かめる ③式に当てはめる
- 検算のコツ:分子量が24.45より大きい物質(ほとんどの有機溶剤)は、mg/m³の数値の方がppmの数値より大きくなる
- 例:メタノール(CH₃OH、分子量32)130mg/m³ → 130×24.45÷32≒99ppm
標準ガスの調製も同じ計算
分析に関する概論では、液体の物質を捕集袋の中の清浄な空気に蒸発させて、決まった濃度の標準ガスを作る計算が出ます。質量から出発するだけで、手順は型カード0-3-Aと同じです。
型カード0-3-B 捕集袋で作る標準ガスの濃度
- 言葉の式:ppm=蒸気の体積(mL)÷空気の体積(m³)
- 手順:①液体の質量(mg)÷分子量=mmol ②mmol×24.45=蒸気の体積(mL)③空気の体積をm³に直して割る(1L=0.001m³)
- 例:メタノール6.5mgを、清浄空気50Lの入った捕集袋の中で完全に気化させた。①6.5÷32=0.203mmol ②0.203×24.45=4.97mL ③50L=0.050m³なので、4.97÷0.050≒99ppm
4 気体の法則は「比」で解く
例 注射器に空気を閉じ込め、温度を変えずに押して体積を半分にすると、中の圧力は2倍になります。同じ数の分子が半分の広さに押し込まれるので、壁にぶつかる回数が2倍になるからです。
気体の量(mol)が変わらないとき、圧力・体積・温度の間には次の関係があります。
| 変えないもの | 関係 | 例 |
|---|---|---|
| 温度 | 圧力と体積は反比例 | 体積を半分にすると、圧力は2倍 |
| 体積 | 圧力は絶対温度に比例 | 27℃(300K)から127℃(400K)にすると、圧力は4/3倍 |
| 圧力 | 体積は絶対温度に比例 | 27℃から127℃にすると、体積は4/3倍 |
絶対温度とは ℃に273を足した温度で、単位はK(ケルビン)です。気体の法則では、必ず絶対温度を使います。℃のままだと、0℃のときに比が計算できなくなるからです。
型カード0-3-C 気体の法則(比で解く)
- 言葉の式:同じ量の気体なら、圧力×体積÷絶対温度は変わらない
- 手順:①℃を絶対温度(+273)に直す ②変えないものを確かめる ③比例か反比例かで、倍率を掛ける
- 例:27℃・1.0気圧で密度1.2g/Lの気体を、圧力はそのままで87℃(360K)にすると、体積が360/300倍に膨らむので、密度は1.2×300÷360=1.0g/L
これらをまとめた式が、PV=nRT(Pは圧力、Vは体積、nは物質量、Tは絶対温度、Rは気体定数)です。試験でRの値が与えられたときは、この式から物質量やモル質量を求めます。それ以外は、比で解く方が早く、間違いも少なくなります。
5 分圧:混ざった気体の圧力はmolで分ける
例 窒素28g(1.0mol)と酸素16g(0.50mol)を混ぜ、全体の圧力が1.5気圧になりました。窒素が受け持つ圧力(分圧)は、molの割合で分けて、1.5×1.0÷1.5=1.0気圧です。
本文1で見たとおり、気体の体積や圧力を決めるのは分子の数です。そのため、混ざった気体の圧力は、それぞれの気体のmolの割合で分け合います。
型カード0-3-D 分圧
- 言葉の式:分圧=全圧×(その気体のmol÷全体のmol)
- 手順:①それぞれの気体の質量をmolに直す(0-2-B)②molの割合を出す ③全圧に掛ける
- 落とし穴:質量の割合で分けない。上の例で質量の割合(28÷44)を使うと、0.95気圧となって誤りになる
燃焼の後の圧力 密閉した容器の中で炭素を燃やす問題も、分子の数で考えます。炭素が燃えると、酸素の分子1個が二酸化炭素の分子1個に変わります(C+O₂→CO₂)。気体の分子の数が変わらないので、温度が元に戻れば圧力も元のままです。反応式の読み方は0-5で扱います。
ここだけは覚える
- 25℃・1気圧で1molは24.45L:気体の種類によらない。1mmolなら24.45mL。
- 1ppmは空気1m³に1mL:mg/m³=ppm×分子量÷24.45。逆はppm=mg/m³×24.45÷分子量。
- 気体は分子の数で考える:法則は絶対温度を使って比で解く。分圧はmolの割合で分ける。
練習問題
原子量はH=1、C=12、N=14、O=16とします。温度の指定がなければ25℃・1気圧とします。
- 0.5%は何ppmですか。
- 気体0.20molの体積は何Lですか。
- ベンゼン(C₆H₆)10ppmは何mg/m³ですか。
- アセトン(C₃H₆O)240mg/m³は約何ppmですか。
- 清浄空気20Lの入った捕集袋の中で、トルエン(C₇H₈)0.75mgを完全に気化させました。トルエンの濃度は約何ppmですか。
- 温度を変えずに、2.0Lの気体を0.50Lに押し縮めました。圧力は何倍になりますか。
- 体積を変えずに、気体の温度を27℃から327℃にしました。圧力は何倍になりますか。
- メタン(CH₄)8.0gと窒素(N₂)42gを混ぜた気体の全圧が1.0気圧のとき、メタンの分圧は何気圧ですか。
解答
| No. | 答え | ポイント(型カード) |
|---|---|---|
| 1 | 5000ppm | 1%=10,000ppm |
| 2 | 4.89L | 0.20×24.45 |
| 3 | 約31.9mg/m³ | 分子量78。10×78÷24.45(0-3-A) |
| 4 | 約100ppm | 分子量58。240×24.45÷58≒101(0-3-A) |
| 5 | 約10ppm | 0.75÷92=0.00815mmol、×24.45=0.199mL、20L=0.020m³で割る(0-3-B) |
| 6 | 4倍 | 体積が1/4なので反比例で4倍(0-3-C) |
| 7 | 2倍 | 300Kから600Kで2倍。℃のまま(27→327)だと12倍と誤る(0-3-C) |
| 8 | 0.25気圧 | メタン0.50mol、窒素1.5mol。1.0×0.50÷2.0(0-3-D) |
この章で解けるようになった過去問
| 科目・席 | 罠の型 | 出題(13回中) | 使う型カード |
|---|---|---|---|
| デザイン問1 | ppm⇔mg/m³の換算 | 7回 | 0-3-A |
| デザイン問1 | 体積分率(%)とppmの関係 | 1回 | 本文2 |
| 分析問3・問4 | 理想気体の法則 | 4回 | 0-3-C |
| 分析問3・問4 | 混合気体の分圧 | 3回 | 0-3-D |
| 分析問4 | 気化した物質のモル質量・気体の密度 | 3回 | 0-3-C(Rが与えられたらPV=nRT) |
| 分析問4 | 燃焼後の密閉容器の圧力 | 2回 | 本文5(反応式は0-5) |
| 分析問7・問8 | 捕集袋による標準ガス調製 | 3回 | 0-3-B |