0-2 物質量(mol)
この章のゴールと導入クイズ
この章を読み終えると、分析に関する概論の「原子の構造」(問1)と「モル質量と物質の質量」(問2・問11)が解けるようになります。13回で延べ9問ですが、それ以上に大事なのは、0-3以降の全ての計算がmolを通り道にしていることです。この章は、第0部の計算の「土台工事」にあたります。
Q1 水18gと、アルミニウム27gがあります。中に含まれる粒(水は分子、アルミニウムは原子)の数が多いのはどちらでしょう。
- 水の方が多い
- アルミニウムの方が多い
- どちらも同じ
Q2 青い結晶の硫酸銅(実験室でよく使う試薬)を天秤で量り取りました。量った重さには、結晶に含まれている水の重さも入っているでしょうか。
- 入っている
- 入っていない(乾いた結晶なので水はない)
- 量り方による
(答え Q1:3 Q2:1)
1 原子の中身:重さは真ん中、電気は外側
原子は、真ん中の小さな原子核と、その周りを回る電子でできています。原子核の中には、陽子と中性子が詰まっています。
| 粒 | 電気 | 重さ | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| 陽子 | +(プラス) | 1とする | 数が原子番号。元素の種類を決める |
| 中性子 | なし | 陽子とほぼ同じ | 陽子と合わせた数が質量数 |
| 電子 | −(マイナス) | 陽子の約1840分の1 | 重さはほぼゼロ。出入りすると原子が帯電する |
質量数=陽子の数+中性子の数 電子は軽すぎて重さにほとんど効かないので、質量数には入れません。
帯電の向き 電子はマイナスの電気を持っています。原子が電子を失うと、マイナスが減るので全体はプラスに、電子を受け取るとマイナスになります。
試験で正答になった誤りの記述は、どれもこの表で見抜けます。「質量数は陽子と電子の数の和」(電子は入れない)、「電子の質量は陽子と同程度」(約1840分の1)、「電子を失うと負に帯電する」(プラスになる)の3つです。
2 molは「粒の束」
鉛筆を12本ずつ束ねたものを1ダース、2ダース、…とまとめて数えるように、原子や分子は6.02×10²³個ずつ束ねたものを1mol、2mol、…とまとめて数えます。この6.02×10²³mol⁻¹がアボガドロ定数です(単位は「1molあたりの個数」なのでmol⁻¹。0-1参照)。
原子量・分子量とは 原子の重さを、炭素原子(¹²C)を12としたときの比で表した数が原子量です。水素はおよそ1、酸素は16なので、酸素原子は水素原子の約16倍の重さです。分子量は、分子を作る原子の原子量の合計で、水(H₂O)なら1×2+16=18です。どちらも「重さの比」なので、単位はありません。
なぜこんな半端な数なのか たとえば水は分子量が18なので1molで18g、炭素は原子量が12なので1molで12gになります。これは、原子量・分子量の数値にそのままg(グラム)の単位を付ければ、1mol束ねたときの重さになるように、6.02×10²³という数を決めたからです。重さ(g)と粒の数を、原子量を仲立ちにして行き来できるようにした「束の大きさ」がmolです。
これで導入クイズQ1が解けます。水18gもアルミニウム27g(原子量27)も、どちらも1molなので、粒の数は同じ6.02×10²³個です。
よく使う原子量(試験では問題文に与えられることが多い)
| 元素 | H | C | N | O | Na | Al | S | Cl | Ca | Cu |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 原子量 | 1 | 12 | 14 | 16 | 23 | 27 | 32 | 35.5 | 40 | 63.5 |
型カード0-2-A モル質量
- 言葉の式:化学式の中の原子の原子量を、個数の分だけ足して、g/molを付ける
- 手順:①化学式の原子を種類ごとに数える ②原子量×個数を足す ③g/molを付ける
- 例:二酸化炭素CO₂=12+16×2=44g/mol
型カード0-2-B 質量とmolの換算
- 言葉の式:mol=質量÷モル質量、質量=mol×モル質量、粒の数=mol×6.02×10²³
- 手順:①モル質量を出す(0-2-A)②割るか掛けるかを、単位が打ち消されるかで決める(0-1-B)
- 例:水9.0gは、9.0÷18=0.50mol。粒の数は0.50×6.02×10²³=3.0×10²³個
コラム:アボガドロ定数の定義 以前は「炭素12(¹²C)12gに含まれる原子の数」と定義されていましたが、2019年からは6.02214076×10²³mol⁻¹という値そのものが定義になりました。試験の「天然の炭素12gに含まれる原子の数と同じ」という記述は、天然の炭素には¹³Cなども混じるので誤りです。
3 水和物:結晶の中の水も重さに入る
硫酸銅の青い結晶は、硫酸銅(CuSO₄)1個につき水5個を結晶の中に抱え込んでいます。これを硫酸銅五水和物と呼び、CuSO₄・5H₂Oと書きます。見た目は乾いた結晶でも、水は結晶の一部として組み込まれているので、天秤で量った重さには水の分も入ります。導入クイズQ2の答えはこのためです。
なぜ試験に出るのか 分析では、試薬を量り取って標準液を作ります。量っているのは水和物そのものなので、水を除いたモル質量で計算すると、作った液の濃度がずれます。試験では「水和水を足し忘れる」ことを誘う選択肢が必ず並びます。
型カード0-2-C 水和物
- 言葉の式:水和物のモル質量=本体のモル質量+18×水の個数
- 手順:①「・」の前(本体)のモル質量を出す ②「・」の後ろの水の個数×18を足す ③その値で質量をmolに直す(0-2-B)
- 例:CuSO₄・5H₂O=(63.5+32+16×4)+18×5=159.5+90=249.5g/mol
例題 硫酸銅五水和物4.99gを水に溶かしました。溶けている銅(Cu)は何gですか。
- 硫酸銅五水和物のmol:4.99÷249.5=0.0200mol
- 硫酸銅五水和物1個に銅は1個なので、銅も0.0200mol
- 銅の質量:0.0200×63.5=1.27g
もし水和水を忘れて159.5で割ると、0.0313molとなり、銅の質量を5割以上多く見積もってしまいます。
ここだけは覚える
- 重さは原子核、電気の出入りは電子:質量数=陽子+中性子。電子は陽子の約1840分の1。電子を失うとプラスに帯電する。
- molは粒の束:1molは6.02×10²³個(単位はmol⁻¹)。1molの重さは原子量・分子量にgを付けた値。
- 水和物は水も全部足す:CuSO₄・5H₂Oのモル質量には、水5個分(90)を含める。
練習問題
原子量はH=1、C=12、O=16、Na=23、S=32、Cu=63.5とします。
- 原子番号8、質量数16の酸素原子に含まれる陽子・中性子・電子の数を答えなさい。
- 「中性の原子が電子を失うと、負に帯電する」は正しいですか。
- 二酸化炭素CO₂のモル質量を求めなさい。
- 水酸化ナトリウムNaOH 8.0gは何molですか。
- 水0.50molは何gですか。
- 二酸化炭素1.0molに含まれる分子の数と、酸素原子の数を答えなさい。
- 硫酸銅五水和物CuSO₄・5H₂Oのモル質量を求めなさい。
- 硫酸銅五水和物2.495gを水に溶かしました。溶けている銅は何gですか。
解答
| No. | 答え | ポイント(型カード) |
|---|---|---|
| 1 | 陽子8、中性子8、電子8 | 中性子=質量数−陽子。中性の原子は電子=陽子 |
| 2 | 誤り | 電子(−)が減るのでプラスになる |
| 3 | 44g/mol | 12+16×2(0-2-A) |
| 4 | 0.20mol | NaOH=23+16+1=40。8.0÷40(0-2-B) |
| 5 | 9.0g | 0.50×18(0-2-B) |
| 6 | 分子6.0×10²³個、酸素原子1.2×10²⁴個 | CO₂1個に酸素原子2個(0-2-B) |
| 7 | 249.5g/mol | 159.5+18×5(0-2-C) |
| 8 | 0.635g | 2.495÷249.5=0.0100mol、×63.5(0-2-C) |
この章で解けるようになった過去問
| 科目・席 | 罠の型 | 出題(13回中) | 使う型カード |
|---|---|---|---|
| 分析問2・問11 | モル質量と物質の質量(水和物を含む) | 6回 | 0-2-A、0-2-B、0-2-C |
| 分析問1 | 原子の構造(電子・陽子・質量数・帯電) | 3回(2020年度第2回、2023年度第2回、2025年度第1回) | 本文1の表 |
| 分析問1 | アボガドロ定数の定義 | 1回(2019年度第2回)※単位の問題は0-1 | 本文2のコラム |