0-1 数と単位
この章のゴールと導入クイズ
この章を読み終えると、分析に関する概論の問1(単位、毎回)と、デザイン・サンプリングの問17(放射能濃度の計算、毎回)が解けるようになります。2科目で毎回2問、13回で延べ25問に直結する章です。
使う道具は「10の累乗」「接頭語」「単位の換算」「単位の組立」「有効数字」の5つだけです。どれも、身の回りの量に置き換えれば難しくありません。
Q1 1辺が1mの箱(1m³)に、1辺10cmのサイコロ形の容器(容積はちょうど1L)は何個入るでしょう。
- 10個
- 100個
- 1000個
Q2 薬のラベルに「2mg」と「2µg」の2種類がありました。どちらがどれだけ多いでしょう。
- 2mgの方が10倍多い
- 2mgの方が1000倍多い
- 2µgの方が1000倍多い
(答え Q1:3 Q2:2)
1 10の累乗:大きい数も小さい数も「0の数」で書く
作業環境の濃度は、0.00002のような小さな数と、300,000,000のような大きな数を行き来します。0を並べて書くと数え間違えるので、「10を何回掛けたか」で書きます。これが10の累乗です。
| 書き方 | 意味 | 普通の数 |
|---|---|---|
| 10³ | 10を3回掛ける | 1000 |
| 10⁰ | 1回も掛けない | 1 |
| 10⁻³ | 10で3回割る | 0.001 |
| 2.7×10⁻⁵ | 2.7を10で5回割る | 0.000027 |
計算のきまり 掛け算は右上の数(指数)の足し算、割り算は引き算になります。10³×10⁻⁵=10³⁺⁽⁻⁵⁾=10⁻²です。前の数(2.7など)は普通に掛け算・割り算し、指数は指数どうしで足し引きします。
型カード0-1-A 指数の計算
- 言葉の式:前の数どうしを計算し、10の右上の数どうしを足し引きする
- 手順:①前の数を計算 ②指数を足す(掛け算)か引く(割り算)③前の数が10以上や1未満になったら整える(25×10³→2.5×10⁴)
- 例:(3.0×10⁴)×(2.0×10⁻⁶)=6.0×10⁻²
2 接頭語:k・m・µ・nの4つだけ覚える
mg(ミリグラム)のmや、µg(マイクログラム)のµは、10の累乗を1文字で表す記号です。試験で使うのは次の4つだけです。
| 接頭語 | 読み | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| k | キロ | 10³(1000倍) | 1kg=1000g |
| m | ミリ | 10⁻³(1000分の1) | 1mg=0.001g |
| µ | マイクロ | 10⁻⁶(100万分の1) | 1µg=0.001mg |
| n | ナノ | 10⁻⁹(10億分の1) | 1nm=0.001µm |
kは基準(gやLそのもの)の1000倍、m・µ・nは基準から順に1000分の1ずつ小さくなります。つまり「k、基準、m、µ、n」と並べると、隣どうしは必ず1000倍の差です。「1つ右に動くと1000で割る」とだけ覚えれば、全ての換算ができます。導入クイズQ2の2mgと2µgは、mとµが隣どうしなので1000倍の差です。
3 体積と時間の換算:「中身が1の分数」を掛ける
空気の量はL・m³・cm³、時間は秒・分・時間と、同じ量にいくつもの単位が使われます。覚える関係はこれだけです。
| 関係 | 覚え方 |
|---|---|
| 1m³=1000L | 導入クイズQ1:1mの箱に1辺10cmのブロックが10×10×10=1000個 |
| 1L=1000mL=1000cm³ | 1mLと1cm³は同じ(1辺1cmのサイコロ1個分) |
| 1m³=1,000,000cm³(10⁶cm³) | 上の2つを掛ける |
| 1分=60秒、1時間=3600秒 | — |
型カード0-1-B 単位の換算
- 言葉の式:消したい単位が分母と分子で打ち消し合うように、「中身が1の分数」を掛ける
- 手順:①今の単位と、なりたい単位を書く ②「1000L/1m³」「1分/60秒」のような分数を、消したい単位が打ち消される向きで掛ける ③数字だけ計算する
- 例:50L/分をcm³/秒に直す。50L/分×(1000cm³/1L)×(1分/60秒)≒833cm³/秒
この型を使うと、作業環境測定でよく使う「1µg/L=1mg/m³」も導けます。µg→mgで1000分の1、L→m³で1000倍になり、打ち消し合って同じ数になるからです。
4 単位の組立:定義の式から作る
分析に関する概論の問1は、毎回「物理量とその単位の組合せ」を問います。単位を一覧で暗記する必要はありません。その量の定義の式に、もとの単位を当てはめれば組み立てられます。
| 量 | 定義の式 | 単位 |
|---|---|---|
| 速さ | 距離÷時間 | m/s(m·s⁻¹) |
| 力 | 質量×加速度 | N=kg·m·s⁻² |
| 圧力 | 力÷面積 | Pa=N/m²=kg·m⁻¹·s⁻² |
| エネルギー(仕事) | 力×距離 | J=N·m=kg·m²·s⁻² |
| 気体定数 | 圧力×体積÷(物質量×温度) | J·K⁻¹·mol⁻¹ |
| アボガドロ定数 | 粒子の数÷物質量 | mol⁻¹ |
| 放射能 | 1秒あたりの壊変の数 | Bq=s⁻¹ |
右上の「−1」の読み方 試験問題では「mg・m⁻³」のように書かれます。右上の−1、−3は「〜あたり」の意味で、mg・m⁻³はmg/m³と同じです。アボガドロ定数の単位がmolではなくmol⁻¹(1molあたり)になるのも、このためです。
型カード0-1-C 単位の組立
- 言葉の式:定義の式を書き、それぞれの量にもとの単位を当てはめる
- 手順:①定義の式を言葉で書く ②単位を当てはめる ③掛け算は並べ、割り算は右上に−を付ける
- 例:圧力=力÷面積 → N÷m² → N·m⁻²。Nをkg·m·s⁻²に分解すると kg·m⁻¹·s⁻²
5 有効数字:答えは一番粗いデータに合わせる
有効数字は、測った数値のうち信頼できる桁のことです。2.0gと2.00gは同じ重さに見えますが、2.00gの方が1桁細かく量っています。
数え方 先頭の0は数えません。0.0025は2桁、2.50は3桁、1.0×10⁻³は2桁です。
計算のきまり
| 計算 | そろえ方 | 例 |
|---|---|---|
| 掛け算・割り算 | 有効数字の桁数が一番少ないものに合わせる | 2.0×3.14=6.28 → 6.3(2桁) |
| 足し算・引き算 | 小数点以下の桁が一番少ないものに合わせる | 12.3+4.56=16.86 → 16.9 |
なぜこうなるのか 鎖の強さが一番弱い輪で決まるように、計算結果の細かさは一番粗いデータで決まります。粗いデータからは、それより細かい答えは出てきません。足し算・引き算では「小数点以下の何桁まで量ったか」が、掛け算・割り算では「全部で何桁量ったか」が、粗さの目安になります。
引き算では、桁数が減ることがある点に注意してください。7.25−3.1=4.15は、小数点以下1桁にそろえて4.2となり、有効数字は2桁になります。
6 応用:放射能濃度の計算(デザイン問17)
デザイン・サンプリングの問17は、13回中13回、放射能濃度の計算です。中身は、この章の「10の累乗」と「単位の換算」だけで解けます。
型カード0-1-D 放射能濃度
- 言葉の式:空気中の放射能濃度(Bq/cm³)=試料の放射能(Bq)÷(吸引した空気の体積(cm³)×捕集率)
- 手順:①吸引した空気の体積をcm³で出す(流量L/分×時間(分)×1000)②式に当てはめる ③指数を整理する
- 例:流量50L/分で100時間吸引し、捕集率100%で、試料の放射能が3.0×10³Bqだった。
- ①体積=50×6000分×1000=3.0×10⁸cm³
- ②濃度=3.0×10³÷3.0×10⁸=1.0×10⁻⁵Bq/cm³
試験では、この式を「濃度から放射能を求める」「必要な採取時間を求める」の向きでも問います。式の形は同じなので、知りたい量を左に移すだけです。計数効率や検出限界計数率が出てくる問題は、放射性物質の捕集の節で、同じ型カードに1行足して扱います。
ここだけは覚える
- 10の累乗は「掛け算は足し算、割り算は引き算」:前の数どうし、指数どうしを別々に計算する。
- 接頭語は「k、基準、m、µ、n」で隣どうし1000倍:1m³=1000L、1L=1000cm³、1µg/L=1mg/m³。
- 単位は定義の式から組み立てる:圧力=力÷面積でPa=N/m²。右上の−は「〜あたり」。
練習問題
- (4.0×10⁵)×(3.0×10⁻⁸)を計算しなさい。
- (6.0×10⁻⁴)÷(2.0×10²)を計算しなさい。
- 0.35mgは何µgですか。
- 2.4m³は何Lですか。また何cm³ですか。
- 圧力の単位PaをSI基本単位(kg、m、s)で表しなさい。
- 「アボガドロ定数の単位はmolである」は正しいですか。
- 5.0µmol/gは何mmol/kgですか。
- 有効数字に注意して計算しなさい。(1) 3.6×2.15 (2) 15.62−3.4
- 流量20L/分で50時間、捕集率80%で空気を吸引し、試料の放射能は2.4×10³Bqでした。空気中の放射能濃度(Bq/cm³)を求めなさい。
解答
| No. | 答え | ポイント(型カード) |
|---|---|---|
| 1 | 1.2×10⁻² | 4.0×3.0=12、5+(−8)=−3。12×10⁻³=1.2×10⁻²(0-1-A) |
| 2 | 3.0×10⁻⁶ | 6.0÷2.0=3.0、−4−2=−6(0-1-A) |
| 3 | 350µg | mとµは隣どうしで1000倍(接頭語) |
| 4 | 2400L、2.4×10⁶cm³ | 1m³=1000L=10⁶cm³(0-1-B) |
| 5 | kg·m⁻¹·s⁻² | 力(kg·m·s⁻²)÷面積(m²)(0-1-C) |
| 6 | 誤り | 「1molあたりの個数」なのでmol⁻¹(0-1-C) |
| 7 | 5.0mmol/kg | 分子をµ→mで1000分の1、分母をg→kgで1000倍(0-1-B) |
| 8 | (1) 7.7 (2) 12.2 | (1)は2桁にそろえる、(2)は小数点以下1桁にそろえる |
| 9 | 5.0×10⁻⁵Bq/cm³ | 体積=20×3000×1000=6.0×10⁷cm³、×0.8=4.8×10⁷。2.4×10³÷4.8×10⁷(0-1-D) |
この章で解けるようになった過去問
| 科目・席 | 罠の型 | 出題(13回中) | 使う型カード |
|---|---|---|---|
| デザイン問17 | 放射能濃度の計算 | 13回(毎回) | 0-1-A、0-1-B、0-1-D |
| 分析問1 | SI単位の組立(圧力・エネルギー・気体定数など) | 5回 | 0-1-C |
| 分析問1 | アボガドロ定数(単位はmol⁻¹) | 3回 | 0-1-C |
| 分析問1 | 単位の換算(µmol/g=mmol/kg) | 2回 | 0-1-B |
| 分析問2 | 有効数字 | 2回(2019年度第2回、2021年度第1回) | 有効数字のきまり |
分析問1のうち「原子の構造」(3回)は0-2で扱います。